無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
その日のお昼、天音が休憩室でお弁当を広げていると、懐かしい人物が現れた。
「天音、久しぶり」
そう言って、コーヒーのカップを手にしたまま向かいの席に腰を下ろす。坂口俊介、天音の元彼だ。
「……驚いた、久しぶりだね」
以前ストレートだった髪は緩くパーマがかかり、中世的な顔立ちをした彼は同期の女の子の間でも人気だった。
どちらかといえば目立たない部類の自分と、どうして付き合うの?と不思議に思ったものだが、彼曰く『天音は原石だから』と。結局は変化に富まない付き合いがあまりにも退屈で、わずか三カ月で破局。ここ数年は現場監督として、あちこちの支社に勤務していたはずだが……。
「なんでここにいるの?」
「なんだよ、総務部なのに知らないのか。俺、先週から本社勤務」
テーブルにコーヒーカップを置き、両肘を突いて天音を見た。
「そうだったんだ。私、人事課じゃないから」
「ふーん。それにしても天音、なんか雰囲気変わったよな。前は全身黒づくめとか、とにかく色がなかったじゃん」
「そうかな。気のせいじゃない?」
さらりと流すと、坂口は面白そうに眉を上げた。