無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「いつも同じってさ、退屈なんじゃなくて、芯があるってことだったんだなって」
 「今さら?」
 「今さらだよ」

 苦笑しながらも、どこか本気の響きが混じる。
 けれど、過去を掘り返すつもりはないらしい。坂口は話題を軽く切り替えるように肩をすくめた。

 「ま、だからってどうこう言う気はないけどさ。久しぶりに会えて、ちょっと惜しいことしたなって思っただけ」

 惜しいという言葉に、天音の胸は不思議とざわつかなかった。
 懐かしさはある。でも、それだけだ。

 「私、今は」

 言いかけて、天音は口を閉じた。わざわざ説明する必要はない。
 坂口は立ち上がり、カップを持ちなおす。

 「いいよ、そこまで聞かない。顔見りゃわかるし」

 そう言って、ちらりと笑った。

 「番号、変わってないだろ?」
 「うん」
 「じゃ、また連絡するわ。今度はちゃんとタイミング見てな」

 軽く手を振って休憩室を出ていく背中を見送る。天音は弁当箱に視線を戻し、少し冷めたご飯を口に運んだ。
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