無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「まさか。ほんとは天音さんが帰る前に部署に迎えにいこうと思ってたんだ。でも仕事が立て込んでて。ともかく間に合ってよかった」

 息を吐き出し、無邪気に笑う。
 覚えていないわけでも、忘れていたわけでもないと知り、胸に安堵と喜びが広がっていく。会社ではなかなか会えない寂しさも、たったそれだけで帳消しになってしまった。

 「ほかに誰かと約束、ないよね?」
 「あるって言ったら?」

 ついからかうのは、焦らされたことに対するちょっとした仕返しだ。
 幹人は言葉に詰まったが、すぐに逃がさないと決めた目になる。

 「誰にも譲る気ないんで」

 低く落とした声ではっきり言われ、胸の奥がきゅっと掴まれたみたいに鳴った。

 「意外と独占欲強い?」

 照れ隠しに、つい茶化す。

 「ですね。自分でも驚いてます」

 そう言って、幹人は小さく息を吐いた。
 天音は一瞬、返す言葉を探して視線を彷徨わせる。バッグの持ち手を握る指先に無意識に力がこもった。
 からかったつもりが、思った以上に真っすぐな独占欲を向けられて、心臓の鼓動が少し速くなる。

 「そういう顔で言われると、反応に困るんだけど」
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