無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「俺の存在、忘れてない? それにしても随分堂々としてるな」
 「そうですか? でも、隠す理由がありませんから」

 幹人は一歩も引かない。

 「天音さんの時間は、俺が預かっています」

 静かな声で言い切る。

 「仕事の時間も、これからの時間も。軽い気持ちで隣に立っているつもりはありません」

 坂口が鼻で笑おうとして、途中で止まる。

 「……随分大きく出たな」
 「べつに普通です」

 幹人は淡々と続ける。

 「必要な覚悟を必要な分、持っているだけです」

 天音の肩に、そっと手が触れる。引き寄せるでもなく、囲い込むでもない。ただ、そこにいると示す仕草だった。

 「天音さんが選んだのは俺です」

 視線を坂口に戻し、はっきり告げる。

 「過去を否定するつもりはありません。でも、今に口出しされる理由もない」

 空気が、ぴんと張りつめた。
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