無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「天音さんの隣にいる未来を、曖昧なままにしたくない」

 幹人は迷いなく言い切った。
 胸はいっぱい、喉はきゅっと詰まってなにも言えない。

 「だから、俺と結婚してください」
 幹人は一瞬だけ周囲を見回してから、苦笑して続ける。

 「ロマンティックの欠片もない場所ですけど。でも、今じゃないとダメだと思いました」

 ここはエントランスの片隅。人の行き交う音や帰宅を急ぐ足取りが満ちている場所だ。ドラマみたいな演出とは程遠い。
 でも、幹人の眼差しは真剣だった。不器用だけど、真っすぐな言葉が天音の心に響く。
 こんなにもうれしいことがあるだろうか。

 「幹人くん」

 名前を呼ぶと、彼は少し緊張したように唇を引き結んだ。

 「……ありがとう。私でよければ喜んで」
 「本当に?」

 深く頷くと、彼は堪えきれないように息を吐き、照れたように笑った。

 「じゃあ、俺たち、恋人から婚約者に昇格ですね」
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