無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
その夜、幹人のアパートに立ち寄った天音は、一緒にハンバーグを作りはじめた。
色違いのエプロンを着け、フライパンの上でこんがりと焼き色をつけたそれに蓋をして、弱火に落とす。じゅう、と控えめな音とともに肉の香りが部屋に広がっていく。
「今日、杉村さんに言われちゃった」
「なんて?」
付け合わせのブロッコリーを茹でながら、幹人が天音を見る。
「『一往復で婚約者ってわかるわ』って」
「なんか、すみません」
幹人が申し訳なさそうに謝る。
「幹人くんのせいじゃないよ」
「いや、俺、隠しきれてないから。天音さんを好きな気持ちを抑えようとするから、余計に漏れちゃうんだよな、きっと」
「杉村さんも同じこと言ってた」
「ってことは……」
幹人は宙に視線を泳がせて考えるようにしてから続けた。
「自然体でいるほうがいいんだ」
「自然体?」
「そう。好きを隠さない。例えば、こんなふうに」
不意打ちで天音に唇を重ねた幹人が、いたずらっぽく笑う。