無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 思わず力が入り、スプーンが皿にぶつかってカチャンと音を立てた。

 「無難路線を突き進む天音に、違う世界を教えてくれそうだから」
 「私は今の路線で不自由してないから」

 明言したが、理世は「はいはい」と軽く流すように肩をすくめる。

 「そう言うと思った」
 「仕事も順調だし、生活だって」

 言いかけて、言葉が途切れる。順調で問題がなくて、安定している。それは事実。でも、それ以上でも以下でもない。
 理世はフォークを置き、少しだけ声のトーンを落とした。

 「天音はちゃんと幸せに暮らしてる。でも、楽しさは全部〝想定内〟じゃない?」
 「それじゃダメ?」
 「ダメじゃないよ。ただ、天音が自分で決めて、自分で囲った安全圏の中だなって」
 「それはそうだけど……」

 胸の奥を、指先でつつかれたような感覚がする。否定したいのに言葉が追いつかない。
 たしかに天音はごく狭い世界で生きている。予定外とは無縁の世界だ。

 「べつに、その人を彼氏にしろって話じゃないからね? ちょっとした選択肢の話。意外と楽しいかもよ?ってだけ」

 理世は優しく笑った。
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