無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 ちょっと考えられないが、理世の言いたいこともわかる気はする。天音はごく狭い世界の中でしか生きていないから、知らずにいる幸せはあるだろう。
 天音は、あの彼のような選び方をしたことがない。もしかしたら、幼い頃はそうしていたかもしれないが。少なくとも、自転車で好き勝手に走って迷子になったあのときからはそうだ。
 口元に指を添えて少し考える素振りを見せてから、理世はくすっと笑った。目の奥にいたずらっぽい光が浮かぶ。

 「またどこかで会ったりしてね。二度あることは三度あるってやつ」
 「まさか。生活圏は被ってないと思う」
 「そうかな。現に天音がよく行く場所に現れたわけだし」

 思わず言葉に詰まる。天音の行動パターンの中に現れたのはたしか。でも平日の昼間にスーツや仕事着っぽい格好ではなかったから、きっと学生だ。接点はない。

 「嵐の前触れだったりして」

 理世は楽しそうに笑い、残っていたパスタを口に運んだ。

 「理世ったら、やめて」

 嵐のような人は、遠くで眺めるくらいがちょうどいい。
 どうかもう会いませんようにと祈りながら、天音はオムライスの最後のひと口を頬張った。
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