無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 ***

 部屋の灯りを落としたまま、加地(かじ)幹人(みきと)はケージの前にしゃがみ込んだ。
 枝にしがみついたフレックスは、昼間より少し濃い緑色をしている。

 「今日はどうだった?」

 独り言みたいに問いかけながら、ピンセットでコオロギを差し出す。
 フレックスは一瞬だけ体色を変えて、舌を伸ばした。

 「この前、ペットショップで会ったおもしろい人、覚えてるか? その人にまた会ったんだ」

 今日はラーメン屋。おそらくあのあたりで働いているのだろう。

 「二日続けて会うなんてびっくりだよな」

 フレックスはそれに答えるかのように目をゆっくりと動かした。

 「俺が注文したラーメンを見て唖然として」

 そのときの彼女を思い出して口元が綻ぶ。

 (トッピング全部のせって、そんなに変か? ちょっと欲張りだったとは俺も思うけど。……でも、反応がほんとおもしろかったな)
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