無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 あまりにも場違いなひと言に、頭の中が真っ白になる。周囲の視線まで一手に集めてしまった。
 杉村がわずかに眉を動かすのが視界の端に入ったため、慌てて背筋を伸ばし、彼に強い視線を飛ばす。〝余計なことは言わないで〟という念を込めたのに、加地と名乗ったカメレオン男はそれでもにこやかな表情だ。まったく気づいていない。

 (ここは学校じゃないんですけど……!)

 場をわきまえない態度に焦りが募る。

 「知り合い?」

 ふたりを順番に見て、杉村が淡々と尋ねる。

 「い、いえ、偶然、外で」

 首を横に振り、委縮して頭を軽く下げる。

 「そう」

 深追いしない声音だったが、そのひと言で天音は肩に力が入った。
 幹人はというと、気まずさなど微塵も感じさせず、あくまでも穏やかな笑みを絶やさない。

 「おいしいラーメンを教えてもらったんです」

 軽い調子で言い、天音に「ね?」と同意を求めた。

 (空気を読んで……!)

 再び目で訴えるが、当然のごとく彼が気づく気配はない。
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