無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 もっと軽く流すか、仕事とは関係のない質問が飛んでくるかと思っていたのに、幹人は黙ってメモを取っている。ペンの動きも早い。しかも美文字ときた。

 「これは、今月分の申請書の一覧で」
 「この場合、期限を過ぎたら差し戻しですか?」

 途中で入った質問も的確だ。
 天音は一瞬言葉を止め、それから頷く。

 「そう。原則は差し戻し。ただし、上長の確認が取れていれば例外もあります」
 「なるほど」

 納得したように頷き、すぐにメモに書き足す。落ち着いた様子だ。
 そんな彼を見て、警戒心がほんの少しだけ解かれた。あくまでも少し。ミリ単位だ。

 (思ってたより、ちゃんとしてる)

 少なくとも勢いだけの人ではないらしい。仕事中だとわきまえているようだ。

 「次は備品管理ね。ここに入力して――」
 「この在庫数、かなり余裕ありますね」
 「月初だから。月末になると一気に減るんです」
 「へぇ」

 感心したように言うが、ふざけた感じはない。モニターに向かう横顔は真剣だ。仕事として興味を持っているのが、なんとなく伝わってくる。
 説明をひと通り終えたところで、天音は一度モニターから視線を外し、彼の手元に目をやった。メモ帳はすでに細かい文字で埋まりつつある。
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