無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「じゃあ、ここからは実際に触ってもらいますね」

 そう言って、デスク脇に立てかけてあった薄いノートパソコンを指した。

 「それ、会社から貸与されているパソコンです。ログインIDと初期パスワードは、これです」
 「はい」

 IDとパスワードが書かれたメモを渡すと、幹人はすぐに頷き、ノートパソコンを起動させた。

 「まずは、このフォルダを開いて。さっき説明した申請書の整理を、試しにやってみましょう」
 「わかりました」

 キーボードに指を置く所作に迷いはない。画面を確認しながら、指示された通りに操作を進めていく。

 (仕事モードだ)

 天音は内心でそう呟きながら、彼の画面を横目で確認した。余計な動きも雑談もない。

 「なにかあったら、すぐ聞いてください。ひとりで判断しなくて大丈夫ですから」
 「はい、ありがとうございます。まずは、言われた通りにやります」

 そう言って、幹人は素直に頭を下げた。
 普通の新入社員みたいな態度に、逆に調子が狂う。
 どうやらこのインターンは、面倒を見る対象としては思ったほど厄介ではなさそうだ。
 とはいえ油断はならない。必要以上に関わらないようにしようと心の中で呟いた。
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