無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 時計の表示が十二時ちょうどに切り替わったのを見て、天音はふぅと小さく息をついた。
 午前中の業務が一段落し、フロアの空気が少しだけ緩むのを感じる。

 「加地くん、お昼にしましょう」

 真面目にパソコンに向かっていた彼に声をかける。天音は後ろにあるキャビネットからお弁当の入った小さなバッグを取り出し、立ち上がった。

 「お弁当持ってきてるんですか?」
 「そうなの」

 弁当袋を軽く持ち上げて示す。

 「ラーメン屋は行かないんですか?」

 幹人が椅子に座ったままこちらを見上げている。午前中の真剣な表情とは違い、どこか気の抜けた顔だ。

 「あそこに行くのは、水曜日と決めてるの」
 「へぇ、ルールがあるんですね」

 感心したように言った次の瞬間、彼はぱっと立ち上がった。

 「じゃあ俺も、なにか買ってきます。一緒に食べましょう」
 「えっ? ちょっ……」

 そう言いかけたときには、もう遅かった。
 幹人は「すぐ戻ります」とだけ言い残し、軽い足取りでフロアを駆けていく。
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