無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 近づいてみると、一六〇センチの天音が軽く見上げるくらい背が高い。男は動けずにいる天音のそばに屈み込み、床をのんびり歩く爬虫類に迷いなく手を伸ばした。

 「フレックス、冒険心が過ぎるぞ」

 そう言って、躊躇いもなく抱き上げる。その手つきには恐れも慎重さもない。まるでそれがあたり前の光景であるかのよう。
 天音は息を呑んだまま、声を失って立ち尽くした。

 「大丈夫ですよ。カメレオンは人に危害は加えません」

 そういう問題じゃないんですが!と思いながら、体を硬直させる。
 男は瞬きを繰り返しながら首を傾げた。

 「もしかして、爬虫類苦手でした?」
 「苦手というか想定してなかったので……」

 本当は苦手だが、飼い主を前にはっきりそう言うのは失礼。普通はそうでしょう?と言いたいのをぐっと堪える。

 「なるほど」

 納得したように頷きながらも、距離を取る気配がない。とにかく早く、あっちへ行ってほしい。

 「でも、ペットショップならアリですよね」

 (そうかもしれないけど、私にとってはアリじゃないんです……!)
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