無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 天音の心の叫びをよそに、男は涼しげな顔をして続ける。

 「ここ、初めて来たんです。シェルターのサイズ感、実際に置いてみないとわからないから」
 「連れて、来たんですか?」
 「はい」

 彼の言葉を天音が続けると、男はにこやかに答えた。

 「やりたいと思ったら、やらないと気が済まなくて。頭で考えるより動いたほうが早いので」

 思わず言葉を失う。なにからなにまで想定の範囲外だ。
 男はそんな天音の様子に気づいているのかいないのか、カメレオンの背を撫でながら微笑んだ。当のカメレオンはその行為が気持ちいいらしく、球体のように大きな目を細める。

 (わっ……)

 背中がゾゾッとした。

 「コイツ、色が変わるんですよ。環境とか気分で」

 そう言われ、体を強張らせたまま目だけを動かしてその体を見る。艶やかな体色は生き生きとしているが、今は色を変える気分ではないみたいだ。

 「……そうですか」

 そういう情報は必要ないから、とにかく離れてほしい。なにしろこちらは体が硬直して動けないのだから。
< 5 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop