無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「あ、入りました。ありがとうございます」

 彼が自分のスマートフォンを見て、満足そうに頷く。

 「いえ」

 天音は短く答え、画面を閉じた。
 なんだか落ち着かないのは、距離を取るつもりでいたはずの彼の名前が、同じグループに並んだせいだ。ことごとくテリトリーを侵されているから。
 天音の中で、今日という日の〝予定通り〟は完全に崩れ去った。


 仕事を終えたあと、総務部総務課の面々は会社からほど近い居酒屋に集まった。
 木の温もりを感じる店内で、奥の半個室に通される。テーブルはふたつ繋げられ、七人がどうにか収まる配置だ。
 上着を脱いでいるわずかな隙に、幹人がごく自然な動きで隣に腰を下ろした。

 (どうしてここ……)

 驚いたものの今さら動くわけにもいかず、天音は黙って座る。向かいには杉村、その隣には先輩の男性社員が並んだ。
 思い思いにお酒を注文し、飲み物が全員に行き渡ったところで杉村が立ち上がる。

 「じゃ、今日は加地くんの歓迎会ということで」

 彼女の音頭で、自然とみんながグラスを持ち上げる。天音もカシスオレンジサワーを手に取った。
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