無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
ふと、幹人が天音のグラスが空になっていることに気づく。
「なにか注文しましょうか。俺も頼むんで」
「あ、じゃあ、カシスオレンジで」
「さっきからそれ飲んでません? 違うのも飲んでみたらどうですか?」
「ううん、いいの」
首を横に振る。それ以外はいいのだ。
「サワーがいいなら、生グレープフルーツもおいしいですよ。よし、決まり」
「えっ、ちょっ……」
天音が戸惑っているうちに、幹人はちょうど通りがかった店員に注文を済ませてしまった。
(なんて強引なの)
好みはひとそれぞれ。強要はしないでほしい。
不満に思うものの、せっかく和気あいあいとしている場の空気を乱すわけにはいかない。
すぐに運ばれてきた生グレープフルーツサワーのグラスに、おとなしく口をつけた。
(……ん? 意外とおいしい……かも)
続けざまに口をつけて飲み進める。
「どうです? おいしくないですか?」
「おいしい」
ちょっと悔しいが、素直に認める以外にない。
「でしょう? 勧めた甲斐があってよかった」