無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「寺崎さーん」

 振り返らなくても幹人の声だとわかる。

 「待ってくださいって」

 最後にトンと足音を鳴らして彼が横に並び、一緒に歩きはじめる。

 「駅まで一緒に帰りましょう」
 「加地くんは二次会、行かないの?」

 断っていた理由は聞こえていたくせに尋ねる。ほかに言葉が見つからなかったからだ。

 「課題があるんで」
 「そう。学生も大変ね」
 「卒業間近ですから。ところで〝デフォルトさん〟ってなんですか?」

 幹人が唐突に話を変える。

 「私のあだ名」

 そう答えると、夜道のアスファルトを踏む音が一瞬だけ間延びした。

 「なんとなく定着しちゃって」
 「デフォルトって初期設定の、ですよね」

 幹人が確認するように言う。

 「そう。迷ったら基準にする人、って意味なんだって」
 「へぇ」
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