無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 感心したように相槌を打ってから、少しだけ歩調を緩める。

 「それ、かなり信頼されてるってことじゃないですか」
 「そういうのとは違うの。無難な路線を求めがちだから」
 「無難?」
 「できるだけ失敗しないように。加地くんも知っての通り、食べ物屋さんではいつも同じ料理を注文するし。洋服もそう。モノトーンやベージュ系以外着たことないの」

 今日は上から下まで黒一色だ。両親もそんな傾向があり、白黒が入り混じったときには、姉に『三人ともオセロみたい』と言われたことがある。

 「なるほど」

 幹人は納得したように頷いた。

 「だからカシスオレンジばかり飲んでたのか。よっぽど好きなのかと思ってました」
 「もちろん好きだよ。でも一度おいしいと思うと、そればかりになっちゃう」

 そういえば天音とは対照的に、幹人は注文するたびに飲み物をころころ変えていた。ラーメン屋でトッピングをあれこれ選んだ彼そのものだ。

 「でも、それって選ばない勇気も必要ですよね」
 「選ばない勇気?」
 「はい。つい目移りするのが人だと思うけど、それに流されず目新しいものを選ばない勇気」

 意外な言い方に、天音は一瞬だけ言葉に詰まる。
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