無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 入社してすぐの頃の話だ。同期の男の子と付き合っていた時期があったが、代わり映えのしない天音の言動が彼にそう思わせたのだろう。夜景を見に行こうと誘われたときに、夜は寒いし帰りが遅いと不安だからと断ったのが決定打になった。翌日には、付き合って三カ月という早さで振られてしまった。

 (――って私、なんてこと言ってるの!)

 はっと我に返る。初めて『おもしろい人』などと言われたせいで余計な話をしてしまった。

 「ごめん、今のは聞かなかったことにして」
 「残念ながら、もう聞いちゃってますから」

 幹人が肩を震わせる。

 「でも、退屈かなぁ。自分と正反対って感じがするからなのか、寺崎さんってなんか予想外ですよね」
 「予想外!?」

 声がひっくり返った。それは天音が幹人に対して感じている印象そのものだ。まさか自分がそう言われるとは思いもしない。

 「それは加地くんのほうでしょ」

 数秒おいて、幹人は小さく吹き出した。

 「お互い様、ってやつですね」

 そう言いながら肩をすくめる彼は、どこかうれしそうだ。

 「俺、自分が予想外って言われるのは慣れてるんですけど」
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