無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「寺崎さん、こっちこっち」

 満面の笑みで手招きをする。

 「でも駅はこっちだから」

 ついさっきまで向かっていた方向を指で差した。幹人がいるのは脇道。天音は歩いたことのない道である。

 「こっちからも行けますから」
 「そうかもしれないけど、私はこのまま駅に向かうね。お疲れ様」
 「ちょっと待ってくださいって」

 軽く頭を下げて歩きだした天音の前に、瞬間移動でもしたみたいに幹人が立ち塞がる。瞬き一回分だった。

 「……今、ワープした?」

 大真面目に問う。冗談抜きで驚いた。どれだけ足が速いのか。

 「そんなわけないじゃないですか。ってか、こっちから行きましょうよ。気になる店を見つけたんです」

 目をぱちくりさせる天音に構わず、幹人がさっきいたほうを指差す。

 「私は気にならないから」

 むしろ幹人の言う店よりも、脇道に逸れる行為のほうが気になる。というより気がかりである。
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