無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 否定はできなかった。木の扉に貼られた焼き色の写真や、素朴なロゴから、丁寧に作っているのがなんとなく伝わってくる。

 「こういう店、開いている時間に通りかかったら絶対寄ります」
 「私は、決まったところしか行かないから」

 そう言いながらも、天音の視線はショーケースがあるであろう位置を自然と追っていた。

 「ですよね。でも」

 幹人は看板を見上げたまま、軽く笑う。

 「たまにルートを変えると、当たりに出会えたりします」
 「外れの可能性も高いけど」
 「それはそれで、あーやっちゃったな、で終わりですから」

 そう言って振り返った彼の表情は、いたずらっぽいのに押しつけがましくない。
 腕を取られていたことに今さら気づき、天音はそっと力を抜いた。幹人もそれに気づいたのか、あっさり手を離す。

 「次は、開いてる時間に来ましょう」
 「加地くんって、好奇心に素直な人なのね」

 その先になにか楽しいものがあるかもしれないと、知らない道を自転車で走った幼い頃の自分をふと思い出した。あのときの天音も、今の彼みたいな感覚だった気がする。
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