無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 中には、丸くふくらんだバゲットや、表面に粉をまとったカンパーニュ、照りのあるクロワッサンが重なっている。端には、小さな紙に包まれたあんバターらしきものも見えた。

 「こんなに?」
 「つい、あれもこれも気になっちゃって。ひとりじゃ食べきれないから手伝ってください」

 天音は一瞬だけ逡巡してから、いちばん小さそうな丸パンにそっと指を伸ばす。

 「じゃあ、少しだけ」
 「感想、聞かせてください」

 幹人は早速ひとつ取り、満足そうに頬張る。カンパーニュだ。

 「……うわ、うまっ」

 目を丸くしてから細める。よほどおいしいらしく、期待値が上がる。
 天音も取り出したパンを半分に割った。「いただきます」と言ってから遠慮がちにひと口かじり、思わず目を見開く。噛むほどにやさしい甘みが広がり、自然と肩の力が抜けていく。

 「おいしい」
 「でしょ」

 まるで自分の手柄のように誇らしげに笑うのがおかしい。
 天音はバッグからお弁当を取り出し、蓋を開けた。その瞬間、幹人の視線がぴたりと止まる。

 「それ、おいしそうですね」
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