無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 制止する間もなく、幹人はから揚げにさっと手を伸ばし、ひょいとつまんだ。

 「いただきます!」

 ものすごい早業だ。ひと口で食べて、目を丸くする。

 「うわ、これ、おいしい。自分で作ったんですか?」
 「……そうだけど」

 呆れたように言いながらも、不思議と嫌な気はしない。油断も隙もないと思うのに、口元は緩んでしまう。パーソナルスペースにずかずか入り込んでくるのに、拒絶反応が全然起きないのはなぜなのか。
 首を傾げたが、それはきっと彼の人懐こい性質のせいだろうと結論づける。警戒心を解くのがうまいのだ。――まぁ最初はかなり身構えていたけれど。

 「じゃあ、これもどうぞ」

 新たにべつのパンを差し出され、天音はそれを受け取る。気づけば、お互いの持ち寄ったものを交換しながら食べ進めていた。

 「ところで、どうしてカメレオンを飼いはじめたの?」
 「あぁフレックスですね」

 名前を口にしながらうれしそうに頷く。愛着を持っているのがわかる表情だ。
 ペットといったら、普通は犬や猫を選びそうなもの。なぜ爬虫類にしたのか。
 少し風変わりな彼に似合うといえばそれまでだけれど。
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