無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 そう言うと天音はパンに視線を落とし、もうひと口かじった。
 幹人は納得いかないような顔をしつつも、どこか楽しそうに笑っている。

 「まぁ、嫌いじゃないですけどね。少年っぽいって言われるの」
 「そう?」
 「はい。好奇心があるってことだと思ってるので」

 先日の路地やパン屋のことを自然と思い出させる。
 天音はなにも言わずに頷き、お茶の入ったステンレスボトルを手に取った。

 「でも、生き物を飼うって大変じゃない?」
 「手はかかりますけど、観察するのが楽しいです。今日は機嫌いいなとか、昨日とは色がちょっと違うなとか」

 爬虫類にも機嫌の良し悪しがあるとは驚きだ。

 「ちゃんと見てるのね」
 「見てないと、変化に気づけないですから。でも寺崎さんも、周りをよく見てますよね」
 「え?」
 「仕事のとき。気づいたら先回りしてるし」

 そんなところを見られているとは思いもしない。予想外の言葉だった。

 「総務の仕事だから」
 「でも、できない人もいます」

 あっさり言われて、照れを隠すようにお茶に口をつけた。休憩室のざわめきの中で、ふたりの会話だけが、少しだけべつの温度を帯びている気がした。
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