無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「……私のことも観察してたの?」
 「自然と視界に入ってきたというか。カメレオン相手だったら、そうしているうちにちょっと距離が縮んでたりするんですけどね」

 まるで天音との距離を詰めたいと言っているように聞こえて、不覚にもドキッとした。
 冗談なのか本気なのか判断がつかなくて言葉を探す。

 (いやいや、なにを動揺してるの。退屈に見える年上の女をちょっとからかっただけでしょ)

 狼狽えるな、心を強く持て。そう自分に念じる。

 「そういうことは、あまり簡単に言わないほうがいいと思う」
 「そういうことって?」

 幹人が首を傾げる。まさかの自覚なし、か。

 「わからないならいいわ」
 「気になるじゃないですか」
 「いいの、忘れて」

 幹人は肩をすくめ、最後のひと口を頬張った。
 気づけば休憩時間も終わりに近づいている。いつもより短く感じられるのが不思議だ。

 「楽しそうね」

 不意にかけられた声にふたり同時に顔を上げると、杉村がカップを手に立っていた。

 「あなたたち、気が合うようね」

 一瞬、空気が止まる。
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