無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 幹人は照れたように頭をかき、天音は言葉を探して視線を泳がせた。
 天音は無難路線であり、幹人は好奇心の塊。まったくの正反対である。

 「そんなことありません」
 「やっぱりそうですよね」

 同時に答えてしまい、目が合う。しかも、幹人は天音と真逆の返答だ。

 (やっぱりそうって、なに。気が合っているようには思えないんだけど)

 杉村がそれを見て意味ありげに微笑み、天音の隣に軽く腰を掛けたそのとき。

 「お、加地じゃん」

 背後から気さくな声がかけられた。
 振り向くと、設計部の名札を下げた鈴川(すずかわ)昂大(こうだい)が立っていた。
 天音と同期入社で、設計部のホープともっぱらの噂だ。シャツの袖をラフにまくり、笑うと人懐っこい印象が強い。

 「鈴川さん」

 幹人は驚いたように目を瞬かせてから、すぐに表情を崩した。
 どうやら顔見知りのようだ。

 「お久しぶりです」
 「元気そうだな。インターンどうよ?」
 「なんとかやってます」
 「その〝なんとか〟が一番怪しいんだよな」
< 71 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop