無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
翌日――。終業時刻を過ぎ、フロア全体に帰り支度の気配が広がった。
天音もパソコンをシャットダウンし、デスクの上を整える。予定通りに仕事を片づけられてよかったと思いながら立ち上がり、通路に出たときだった。
フロアの一角で、まだ灯っているモニターが目に入る。幹人がひとり、デスクに向かっていた。
(残業……?)
インターンは通常、就業体験が目的だが、幹人の場合は有給インターンと聞いている。とはいえ学生の本文は学業であり、時刻通りに帰らせるのが原則だ。
近づくと、画面にはいくつものファイルが開かれている。写真データ、PDFの報告書、メールの下書き。視線を行き来させながら、眉間にわずかに皺を寄せていた。
「加地くん、まだ終わらないの?」
声をかけると、幹人はびくっと肩を揺らして振り向いた。
「あ、寺崎さん。お疲れさまです」
「お疲れさま。今日、教わってた人、早退したんだっけ」
幹人が小さく頷く。
たしか体調不良で帰ったはずだが、誰も幹人のことを引き継がなかったのか。気づいてあげるべきだったと後悔する。
「そのあとの仕事は、俺が引き受けました」