無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「ううん、特には――って、ちょっと待って。行くって言ってない」

 いつの間にか行く前提になっているため、慌てて足を止める。

 「まぁそう言わず、俺にもカッコいいところ見させてくださいよ」
 「カッコいいところ?」

 振り返った彼に問いかける。

 「女性に奢るところ。さっきはカッコ悪いところ見せちゃったんで挽回させてください」
 「私はべつに気にしてないから」
 「俺が気にするんです。はいはい、行きますよ」

 幹人は大股で歩み寄り、天音の腕を掴んだ。いろいろと想定外が過ぎる。

 「ちょっ、待ってったら。離して」

 腕を引き抜こうにも、彼のほうは逃がすまいとより強く掴むいっぽう。じたばたしている自分はまるで、警察に捕らわれた被疑者みたいだ。

 「一緒に行くなら離してあげます。まぁ俺はこのままでもいいですけどね」
 「意味わかんない」
 「わからなくてもいいです。さて、どこに行きましょう。そうだ、せっかくだから、どっちも入ったことのない店にしましょう」
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