無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 やけに楽しそうに声を弾ませる。さすが好奇心の塊。勢いで突き進む男だ。足取りに迷いは微塵もない。あの店知ってます? こっちは?と方々を指差しては天音に確認してくる。

 「カメレオンのお世話はいいの? フレックス、ご飯待ってるんじゃない?」
 「おりこうにしてるから心配いりません。しつけがいいので」

 どうにか彼が帰りたくなる理由を見つけようとするが、全然歯が立たない。行くと決めたら行く以外の選択肢はないみたいだ。――知ってはいたけれど。

 (だけど私、なにをそんなに必死に帰ろうとしてるんだろ。インターンの面倒をみることは通常運転と同じようなものなのに)

 自分で自分がわからない。いつも簡単に説明がつく思考だし、ものわかりもいいはずなのに。

 (……予定外の誘いだから嫌なだけ。そう、ほかに理由なんてないない)

 なぜか葛藤ひしめく心を落ち着かせ、足を強引に止めた。

 「どうかしました?」
 「わかったから」
 「はい?」
 「一緒にご飯食べる。だから放してくれる?」

 その手、とばかりに彼の手を見た。
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