無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 なにしろ先ほどから通行人たちの好奇に満ちた眼差しを浴び放題なのだ。シュッとしたイケメンが、年上の女相手に正気を失いかけていると思われたくはない。
 幹人が顔をくしゃっとさせる。女の子どころか、万人受けするキラースマイルだ。
 天音が彼を指導する立場じゃなかったら、ドキッとさせられるところだった。

 (……危ない危ない)

 ドキッとしかけた事実には目を瞑り、夜空の彼方に吹き飛ばす。

 「わかりました」

 幹人は素直に聞き入れ、天音の腕を解放した。
 ほっと息をつき、彼と並んで歩きだす。幹人に再びこっちがいい? あっちがいい?と提案されながら、その都度答えていく。
 幹人の足取りは、さっきまでデスクで悩んでいた人と同じとは思えないほど軽やかだ。
 そうして歩きながら、自分の足取りも思ったより重くないことに気づく。戸惑っていたはずなのに――。

 「なんかデートっぽくないですか?」
 「……そういうこと言うなら帰る」
 「冗談です。あ、ここにしませんか?」

 通りに立てかけられた看板の前で、幹人がふと足を止める。筆文字で〝創作料理〟と書かれている。店は路地を入ったところにあるらしい。天音は足を踏み入れたことのない道だ。

 「ちょっと行ってみましょう」
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