無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 「いえ。来てくれて、ありがとうございます」

 少しだけトーンを落とした声だった。

 「あの状況で逃げられる人、いる?」
 「たしかに。強引過ぎましたね、すみません」

 即座に頭をぺこりと下げて続ける。

 「で、なにを頼みましょうか」
 「いつもみたいにパパッと決めて注文しないの?」

 これまでの幹人なら、悩む間もなくそうしているはずだ。

 「さすがに俺から誘っておいてそれもどうかと思って。一応お礼ですし」

 肩を軽く上げ下げして微笑む。

 「じゃあ……これ、とか」

 メニューにある料理を指で差す。見た目が綺麗なうえにおいしそうな、花にらとエビのシュウマイだ。

 「おお~、寺崎さん自ら選んだ」
 「からかわないで」

 拍手する幹人を軽く睨みながらも、つい口元が綻ぶ。
 注文を済ませてほどなくすると、両手にグラスを持った店員がやってきた。

 「生ビールと、生グレープフルーツサワーです」
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