無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます
 もちろん取り壊しなどはあるにせよ。目に見えないものではない。
 無難に生きたい自分と、挑戦を恐れない幹人の根本的な考えが同じだと知って、不思議であると同時になぜかうれしい。

 「変化を嫌う寺崎さんらしい」

 幹人がクスッと笑う。

 「俺は両親が転勤ばかりで、同じ場所に留まっていることが少なかったからなんです」

 さらりと言われた言葉なのに、胸の奥で小さく音がした。
 なるほど、と合点がいく。人懐っこいくせに、どこか一線を引いているところ。距離が近いのに踏み込みすぎないようにしているような、不思議なバランス。
 彼の行動の理由が、急に一本の線で繋がった気がした。

 「だから、場所そのものに価値を感じるというか。変わらずにそこにあるものが、ちょっと羨ましいんです」

 羨ましいという言葉は意外だった。
 好奇心旺盛で、どこへでも踏み出していける人。そう思っていた相手の口から出た、少し弱い部分だ。

 「一つひとつに全力なのはそのせい?」

 業者対応をひとりで抱え込み、途中で投げるのが好きじゃないと言ったときの彼を思い返す。あれは頑固さじゃなくて、彼なりの守り方だったのかもしれない。
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