夜盲
おそるおそる左耳に触れると、金属塊が指先にこつんとぶつかった。表側と裏側のそれに触れてから、もう一度耳朶を下から触ると、確かにピアスが貫通しているのがわかった。指に血はついていないから、うまく開いたのだと思う。ファーストピアスの重さ分だけ、左耳が重みを持ったような気がした。
「すごい、ほんとに開いてる」
「ん。じゃあ、反対向いて」
くるりと身体の向きを180°変えて、今度は佳乃くんに右耳を見せる。彼はもうひとつのピアッサーをパッケージから取り出して、今度は右の耳朶にそれをあてがった。
「せーの、」
ばちん、とまたも破裂音がする。さっきよりもあまり怖くなかった。右耳の重量感覚が、左耳のそれとお揃いになる。
鞄に入っているポーチから持ち運び用の小さい鏡を取り出し、顔を傾けて自分の左耳と右耳を交互に映す。ファーストピアスは、ボール部分が白いパールになっているものにした。真珠みたいな小粒の球が、耳元にやわらかなひかりを灯す。
なんだか、背伸びしているような気分だ。
「これって、いつ安定する?」
「さあ。でも、しばらくは付けっぱにしないとだめでしょ。学校はへーき?」
「んー、大丈夫じゃないけど、べつに身体検査があるわけでもないし。それにあたし、ボブだから、ふつうに髪下ろしてればバレないんじゃない?」
「いいねー、その見通しの甘さ」
彼はくすくすと笑いながら、使い終わったピアッサーのごみをそのままにして、あたしの隣に腰掛けた。
佳乃くんの耳元には、小ぶりなフープピアスがぶら下がっている。シルバーで、底の部分に厚みのある、シンプルながらもおしゃれなピアスだ。街頭のひかりの反射をうけて、鈍く輝いている。
彼は常にそのフープピアスをつけている。寝起きで髪の毛がぼさぼさのときも、小綺麗な格好で夜の街を歩くときも、肌と肌が触れ合うその瞬間も、あたしは彼がそのピアスを外しているところを、見たことがない。彼を構成する一要素として、ずっとそこに癒着している。
「……佳乃くんのピアス、ほしい」
ほとんどひとりごとのように呟くと、佳乃くんは自分の耳を人差し指でちょんと差して、「これ?」と言った。首を縦に振る。
「いいよ。あげる」
「いいの?」
「べつに高い物じゃないし」
右耳と、左耳、それぞれから外して、ふたつを手のひらに乗せられた。
てっきり愛用してるのかと思っていたけど、こうして簡単に手放せるくらいには、モノに執着がないらしい。佳乃くんらしいといえば、佳乃くんらしい。
キャッチ一体型の、フープピアス。手のひらに乗ったそれを、ぎゅっと握りしめる。佳乃くんの体温が残っている気がした。
「……ありがと」
佳乃くんの身体の一部みたいで、それを分け与えられたことがうれしかった。
「じゃー、ピアスあげたから、おれのお願いもきいて」
「なあに?」
「髪、伸ばしてほしいんだよね」
佳乃くんの人差し指が、あたしの毛先をぴん、と弾く。