夜盲
「ていうかー。佳乃くんもよくそんな口叩けるよね? ふつうに佳乃くんって犯罪者でしょ? 女子高生に酒飲ませて、股開かせて、それで散々遊んだあげくにあたしのことゴミ箱に捨てるんでしょ?」
「宵。手に持ってるの、何」
「てかさー、そこの男、キンタマ舐められると興奮するの性癖ヤバいから。ふつうに。自分がキスマーク付けられるのは嫌がるくせに女の肌にはキスマーク付けたがるのも意味わかんないしね? ていうか21歳の男が16歳の女に手出すってどうなの? 花音さんでしたっけ? どう思います? ていうか花音さんって、佳乃くんのキンタマ舐めたことあります?」
手に持った金属バッドで、ごつ、ごつ、ごつ、とローテーブルを叩く。花音さんはブランケットを力強く握りしめてがたがたと震えている。佳乃くんは花音さんを後ろに下がらせる。むかつく。むかついたから、棚に向かってバッドを叩きつける。大きな音が鳴る。棚に仕舞われていた物が床に落ちる。大袈裟なくらいに部屋が荒れていく。あたしはバッドを振り回し続ける。
全員キモい。あたしのことを貶める人間なんて、全員死んじゃえばいいんだ。
「ちなみに佳乃くんは自分のを咥えさせたらそれからチューしてくれなくなるんですよ? あたしのを舐めたあとはチューしてくるくせに、自己中クソキモ男すぎません? あーでも本命の女の子に対してはそーいうのしない感じなんですかね?」
佳乃くんは花音さんを庇うように抱きしめる。あー、やっぱりそうなるのね。キモいね。ふつうに最悪じゃんね。
ここで花音さんを置いて、あたしのことを殴ってでも、あたしの暴挙を止めてくれたなら、まだ救われたのに。佳乃くんはこんな状況でもあたしじゃなくて花音さんを選ぶんだね。へー。そうなんだ。ひどい。ひどいよ。
死ね。死ね。死ね。
「宵。お願い、殴るならおれだけにして」
カノジョを守る良い男にでもなったつもり? だとしたら本当にキモい。あたしのこと汚したくせに。酒飲ませてべろべろにさせて、雨の中置き去りにしたくせに。あたしのこと簡単に捨てたくせに。いろんな女を傷つけてきたくせに、好きな女は傷つけたくないみたいな? ほんとうに自己中じゃない?
「はは、ばかじゃないの?」
「宵、ごめん。だから」
あたしは両手で鉄バットを持ち上げる。
「佳乃くんぶん殴って、そのあとに女も殴るに決まってんじゃん?」