密かに… そっと…
美味しいオムライスを食べ終えたあと、残りの休憩時間は、夢みたいに幸せだった。

詩音くんと二人で、一緒にクエストに出られるなんて。

……そんな乙女なことを考えているくせに、ゲームが始まれば話は別だ。

「やばっ、ごめん。当たらなかった」

「あっ、待って詩音くん。今回復してあげる」

慌てて回復アイテムを使う。

詩音くんのキャラクターのHPが、一気に回復した。

「ありがとう」

「危なかったね」

「完全に囲まれてた」

そう言いながら、詩音くんが少し笑う。

休憩室には、スマホをタップする音だけが小さく響いていた。

でも、不思議と気まずさはない。

さっきまであんなに緊張していたのに、ゲームをしている間だけは自然に話せる。

「そっち敵いる!」

「あっ、本当だ。危な……」

「下がって下がって!」

「了解」

二人で並んで敵を倒していく。

それだけなのに、なんだか嬉しい。

「やっぱり、三波さんすごいね」

「結構長くやってきたからね」

「俺、かっこ悪かったな。頼ってばっかりで」

「始めたばっかりなんでしょ?」

少し笑ってから、続ける。

「それなら、詩音くんすごい上手だよ」

「……そうかな」

「うん。普通もっと操作ぐちゃぐちゃになるもん」

「それ、フォローになってる?」

「なってるよ?」

ふふっと笑うと、詩音くんも少しだけ笑った。

そのあと。

詩音くんは一度私の顔を見ると、照れたようにすぐゲーム画面へ視線を戻した。

(可愛いな)

そんな表情を、私だけが見られた気がして――

今日は、少しだけ特別な日になった。
< 13 / 17 >

この作品をシェア

pagetop