僕の父親はコックリさん

廃寺

 車を路肩に停めて三人で廃寺へ向けて歩き出した。さっきまでは蝉の声を近くで感じていたけれど、ここでは少し遠くから聞こえてくる。
 木々に囲まれた石段は上へ上へと続いていて、その先が見えない。更に横幅が人ひとりしか通れないほどしかなく、一段ずつの高さが違うのであやうく踏み外してしまいそうになる。
 誰も手入れをしなくなった寺の石段は苔むしていて、周辺の空気も湿っぽい。
 薄暗い空気に無言歩く中、浩平だけが足取りが軽くなっているのがわかった。さっきからトントントンとリズミカルに上がってくる足音が後ろから聞こえてきている。
「きっと、自分の家に戻ってきたような感覚なんでしょう」
 黒羽がつぶやく。
< 291 / 352 >

この作品をシェア

pagetop