元カレは、今も私をミケと呼ぶ
――この二年間。
頭の中から、ミケが消えたことはない。


彼女が濡れた傘を動かしたときに、さりげなく左手を見てしまった。

(……何もついてない……)

口元が勝手に上がる。
分かりやすく、安堵している俺がいる。


なんでこの駅にいるのか、気になって仕方なかった。
そんなこと、今の俺が聞く権利なんてないのに。

「取引先の人とご飯食べてて」

彼女の答えに、聞かなきゃ良かったと即座に後悔する。

仕事なら仕方ない。

でも、相手は男か?

二人きりだったのか?

喉元まで出かかった問いを必死で飲み込もうとした――のに。

「それってさ。……男?」

最悪だ。なんで聞いちゃうんだよ、俺。

ミケが少し困ったような顔で俺を見つめる。

しまった、重すぎた。
言った直後から後悔した。

今すぐ話題を変えなきゃ。
でも、口を開けばまた余計なことを口走りそうだ。


そうだ、連絡先。
逃げるようにスマホを取り出し、祈るような心地で連絡帳をスクロールした。

……あった。

胸の奥が熱くなる。

まだここにある。

自分に呆れて笑いそうになる。

「ちょっと、確かめたいことがあっただけ」

それしか言えなかった。

連絡先を確認してたなんて、口が裂けても言えるわけがない。
< 16 / 18 >

この作品をシェア

pagetop