元カレは、今も私をミケと呼ぶ
その後も少しだけ言葉を交わした。
相手が付き合ってる男じゃないと分かった瞬間、心の中で派手にガッツポーズを決める。

……顔には出ていないはずだ。たぶん。きっと。


無情にも、次の電車がホームに滑り込んでくる。
嫌だ。行くな。
もう少し、いや、かなりもっと話したい。

彼女から「話したい」と言ってくれたら、ヤマトん家行くのを今日はやめたっていい。
そう思ってしまうくらい、俺は今、自分の気持ちと戦っている。


でも。俺は、振られた男なんだから。

困らせたくない。


本音を何とか飲み込んで、精一杯の余裕を顔に貼り付ける。

「じゃあ、気をつけて」

閉まるドアの向こうで、ミケがこちらを見ている。

行くな。いや、行くのは分かってる。でも行くな。

気づけば、口が勝手に動いていた。


「――待ってる」


聞こえなくてもいい。届かなくてもいい。

ただ、言わずにはいられなかった。

昔と、同じ言葉を。


遠ざかる電車を見送り、ホームに一人取り残される。

大きく息を吐き出し、もう一度スマホを握りしめた。

連絡するか? いや、急すぎるか。

でも。

いや。

しかし。

どうしたらいい?

一人で悶々として、重い足取りで友人の家へ向かった。
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