あの日の風の、その続き〜戦う公爵令嬢と、王女が選んだ未来
戦場に向かった者と、城の護衛に残ったもの。
城に残った者は、王族護衛と訓練に追われる日々を送っていた。
あれから3日経つけれど、戦場に向かった者からの連絡はない。
連絡係がいるはずだけど、王都から戦場になっている場所までは、馬でも丸一日では届かない。二日はかかる距離だ。
戦況がわからない。
クロードが、いない。
兄様も、いない。
城に残された私と、エリシアは、ただ、待つしかできなかった。
4日目のことだった。
王宮の、エリシアの部屋で寝泊まりをしていた私は、夜中、バタバタと廊下を走る足音に目を開けた。
「……何かあったの?」
廊下に出ると、私の姿を見たメイドの1人が慌てたように口を開いた。
「ゼン様が戻られました!」
「兄様!」
その部屋を開けると、そこにはゼンがいた。
「……リゼ。」
疲れた顔をしていたが、リゼの顔を見て一緒ほっとしたように表情を和らげた。
「起こしてしまったか。すまない。」
優しい、ゼンの声。
「……兄様、無事でなによりです。戦況はどうですか?」
しかしそのリゼの言葉に、ゼンが一瞬戸惑ったのをリゼは見逃さなかった。
「……何か、あったのですか?」
「……前線が突破された、という報告が入った。第3騎士団が攻防にあたっていたはずだが、それ以上の情報が入ってこない。私はこれからすぐに向かう。」
突破……。
クロードは前線に立つ。
団長の言葉が頭に響く。
視界の隅に黒髪が映る。
気づいたときには、走り出していた。
「リゼ!」
ゼンが呼び止める声も聞こえなかった。
「……リゼ?」
「ごめん、エリシア!私行かなきゃ!」
一度着替える為部屋に戻ると、エリシアが起きてリゼの名前を呼んだ。
その不安そうな顔にそう告げると、エリシアは、何も言わずにうなづいた。
「リゼ。行くのならこの馬を使え。」
庭に出ると、ゼンが馬を2頭連れて立っていた。
「走って向かうつもりだったのか?」
呆れたように言うゼンから、馬を一頭受け取る
「……兄様。」
その馬は、リゼの愛馬。
クラウディアの屋敷に置いてきたはずだったのに。
「ここに来る前に屋敷に寄った。ヴァンが準備しておいてくれたんだ。帰ったら礼を言えよ。」
前を走るゼンに、置いていかれないように必死に馬を走らせる。
強くなったつもりでいたのに、やっぱりまだゼンには追いつけない。
その背中を見ながら、あの日を、思い出す――。