僕らの青春創作日記
それを書いているのは君だ。

放課後になると、君はこのノートに物語を書く。
そしてその最初の読者になるのが、私の役割だった。

最初は、なんで私が、なんて思っていたのに。
最近はそれを読むのが、少しだけ楽しみになっていた。

「できた」

君はそれだけ言って、ノートを渡す。

私はそれを受け取る。
それが、いつの間にか当たり前になっていた。

ノートの中には、ここにはいない“誰か”の物語が書かれている。

学校で笑い合う“誰か”。
部活動に全力な“誰か”。
ありふれた日常を過ごす“誰か”。
そして、涙を流す“誰か”。

ここでは起こらない「もしも」が、そこにはあった。

「次、何書くの?」

そう尋ねると、君は少し考えてから言った。

「まだ決めてない。でも、多分“さよなら”かな」

一瞬だけ胸の奥がざわつく。

でも君はすぐに笑った。

「冗談。まだ書かないよ」

「もう少し書きたいからね」

そう付け足して、また笑う。

その笑顔はいつも通りだった。
いつも通りのはずなのに、なぜか少しだけ見つめてしまう。

ノートを返すと、君はそれを丁寧に受け取った。
そこに、夢が詰まっているみたいに。

「ねえ」

不意に声がかかる。

「これ、最後まで書けると思う?」

私は少し間を置いてから答えた。

「……最後まで書いてもらわないと、私が困る」

本心だった。

なのに君は、小馬鹿にするみたいに、でもどこか嬉しそうに笑う。

「最初は読むの嫌がってたくせに」

「べつに」

そう曖昧に返すと、君はにやにやしながら言った。

「照れてる?」

表情に少し腹が立ってきて、私は視線をそらした。

「もう帰る」

そう言うと、君はいつも通り手を振った。

いつも通りのはずなのに、なぜか今日は歩き出すのが少しだけ遅くなる。
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