冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
 千恵がこの軽井沢の地に来てから、もう四年以上の時が過ぎていた。
 身重のまま軽井沢にやって来た千恵は、明美の妹である藤本仁美(ふじもと ひとみ)の家で出産まで過ごすことになっていた。

「ここは空気もいいし、ゆっくり休むにはちょうどいいわ。それにね、ちゃーんと病院もあるんだから安心してね」
「お、お世話になります」
「そんな固くならないでー。お姉ちゃんの代わりだと思ってなんでも頼ってちょうだい」

 仁美は姉の明美と良く似た雰囲気を持っていて、千恵はすぐに彼女と親しくなった。
 出産の立ち会いまでしてくれた彼女は、もう千恵にとって家族のような存在だった。
 彼女は軽井沢に何件もゲストハウスを持つオーナーで、新しいゲストハウスの管理人を任せたいと言ってくれたのだ。

『貴女の身体が元気になってからで構わないわ。ゲストハウスはね、私の道楽みたいなものだから』

 その言葉に甘えて、子供達が卒乳したタイミングでゲストハウスひだまりをオープンさせたのだった。
 木造のコテージをイメージしたひだまりは、外観も内装も落ち着いた雰囲気のゲストハウスだ。
 このゲストハウスには色んな人々がやって来る。けれどホテルや旅館とは違って自由に過ごす人が多い。仁美の力を借りながらではあったが、千恵一人だけでもなんとか運営をこなせていた。

 それに子供達は二歳を過ぎた頃からバスで保育園に通うようになり、千恵の負担はかなり軽くなっていた。

(軽井沢に来てからもうすぐ五年……そう思うとあっという間だったわね)

 振り返らずに一心不乱に駆け抜けた日々。最近ようやく余裕が出てきた。
 そのせいか、ふと寂しさを感じることもある。そんな時は胸に吊り下げた指輪をこっそりと握りしめていた。

(どうか今日も一日、強くあれますように)

 密やかに指輪に願って、千恵は再び管理人の顔に戻り笑みを浮かべた。


「笠原様、軽食のご準備が出来ました」

 千恵が笠原夫妻に声をかけに客間に向かうと、そこには湊斗と紬の姿もあった。

「ちょっと二人とも、お客様のところで何してるの?」

 千恵が驚いて声をかけると、二人は自慢げに千恵にパンフレットを見せつけた。

「あのね、おすすめのスポットをしょうかいしてたんだよ!」
「ほら、ここのみち、おはながきれいだよって。ちゃーんとおしえてたんだよ!」

 お客様のお邪魔をしてはいけないと叱ろうとすると、笠原夫妻が「私たちが頼んだんだよ」と口を開いた。

「いつも同じところを巡るから、今回は新しいことに挑戦したくてね」
「湊斗くんと紬ちゃんは、とっても紹介が上手だったわ。将来はガイドさんになれそうね!」

 褒められてまんざらでもない様子の双子を見て、千恵は表情を和らげた。

「子供達の相手をしてくださってありがとうございます。さあ、食事が冷める前に食べましょう」


 千恵はゲストハウスで軽食を提供するようにしていた。
 ゲストハウスは基本的に素泊まりの場所として利用する人達が多く、特に食事は求められていなかったが、千恵達が食事をとっている姿を見たお客様から「食べてみたい」と要望を受けることが多かったのだ。
 そのため、ウェルカムドリンクならぬウェルカム軽食を用意することになったのだ。

 それが意外にも好評で、口コミでお客様が増えていった。

(明美さんが料理の基礎を叩き込んでくれたおかげね)

 ふと昔を思い出して感傷的になる。けれど、皆の明るい声が千恵を現実へと引き戻した。

「ここの軽食楽しみだったのよ! 今日はなにかしら?」
「今日は一口ピザを作ってみました。ご近所さんからお裾分けしてもらったお野菜を乗せてあるので、新鮮で美味しいですよ」
「ぼくもたべたい!」
「あたしも!」
「皆で食べましょうね」

 笠原夫妻と五人で食卓を囲む。
 千恵はこのお客様との食事の時間が大好きだった。


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