冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
「社長……。これが一体何だって……」
「父が失敗した事業のせいで、結婚させられそうになったのは事実だ。だが、俺はそれを拒否した。今は事業を建て直して社長になったんだ」
「そう、だったんですね」

 知らなかった事実を聞かされ呆然としてしまう。

(結婚、していない。篤史さんが拒否したから?)

 彼の言葉を何度も反芻するが、今の千恵には上手く飲み込めなかった。
 二人の間に沈黙が流れる。

 すると篤史が千恵の顔をそっと覗き込んだ。

「俺に聞く権利はないかもしれないが……幸せか?」

 彼の口からこぼれ落ちた言葉は、以前と変わらない優しさに満ちていた。

「……はい」

 千恵が答えると同時に廊下からパタパタと足音が近づいてきた。

「ママー。おきゃくさまに『けいしょく』ださないとダメだよ!」
「ママばっかりおきゃくさまとおはなししててずるーい」
「ごめんね。ママ、ちょっとお客様とお話があったの」

 二人の頭をぐりぐりと撫でると、篤史も顔を和らげた。

「ママを独占しちゃってごめんな。台風なのに二人で心細かっただろう?」
「ううん、ぼくたちはぜんぜんへいきだよ! ママのほうがさびしがりやなんだから」
「そうよ! ママはねパパがいなくてさびしいの。えっと、シングルマザーなんだから。ほいくえんでせんせいもい
ってた!」

 紬の言葉に篤史の目が丸く見開かれた。

「今のは本当か? それはつまり……」
「マ、ママだって強いんだからね! 湊斗と紬がいればへっちゃらなのよ。さあ、篤史さんの軽食を用意するからキッチンに戻りますよー」

 篤史の言葉を遮って、子供達に告げる。
 すると子供達は篤史の腕に抱きついた。

「こんどはあつしさんといっしょがいいよ。さっきあそぼうって……ダメ?」
「そーよ。あつしさん、いいでしょ?」

(しまった)

 二人の言葉に、千恵は自分がうっかり「お客様」ではなく「篤史」と呼んだことに気がついた。
 けれど篤史は気を害した様子もなく、むしろ嬉しそうに「じゃあ一緒に遊ぶか」と二人に告げていた。

 居た堪れなくなった千恵は三人を残してキッチンへと向かう。
 冷蔵庫を開けながら自分の心を落ち着けた。

(篤史さんは今、社長だって言ってた。彼が築き上げた努力をふいにしたくない……。私が彼の隣にいられる器じゃないもの)

『篤史に貴女は相応しくない』
『次期社長の妻としての器はない』

 ずっと忘れていた彼の父の言葉が頭を支配する。

(子供達の父が彼だってこと、隠し通すのよ)

 明日には台風も過ぎ、交通網も復旧するだろう。それを過ぎれば、またそれぞれの人生に戻るだけだ。

「とにかくやり過ごさなきゃ! まずは軽食……何にしようかしら? 夕飯の時間も近いからあっさり系かな」

 団体客のための軽食用食材はたっぷりあるが、夕飯も四人で食べるならメニューを考え直さなければならない。
 うーんと唸っていると、篤史の部屋の方から子供達の大声が聞こえてきた。

(喧嘩?)

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