冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
 頭を抱えていると、シャワーを終えた篤史がリビングに顔を出した。

「シャワー助かった。……その子達は?」

 固まっている篤史に子供達が駆け寄る。

「ゲストハウスひだまりへようこそー」
「ごゆっくりおすごしください!」

 困惑したように視線を寄越す篤史に、千恵は「私の子供なの」と告げた。

「……っ! そうか。千恵の子供……」

 篤史は眉を下げて微笑んだ。けれどどこか寂しそうに見えた千恵は目を逸らした。

(私が、寂しいって思ってほしいだけよ)

 ズキリと痛む胸を押さえて千恵は子供達に「挨拶しなさいね」と促した。

「湊斗です。三さいです。つむとふたごです。でもぼくがおにいちゃんです」
「紬です。三さいです。おきゃくさまがきてくれて、とーってもうれしいです!」

 いつもより興奮していた二人が長めに挨拶をすると、篤史の表情が少しだけ変化したように見えた。
 篤史はしゃがみ込んで二人と目線を合わせると、「緑川篤史です」と挨拶をした。

「雨で濡れてしまったところを君たちのママに助けてもらったんだ」
「そーなの? きょうはたいふうだから、とまっていきなよ! おそとはあぶないよ」
「それがいい! あたし、いっしょにあそびたーい! 三人でできるあそびはもうあきちゃったの」

 篤史は目を細めて微笑み、再び立ち上がって千恵を見た。

「申し訳ないが、今日は泊めてもらえないだろうか」
「も、もちろんです。こんな天気ですし、電車やバスも止まっていますから、ここでゆっくりなさってください」

(今日、篤史さんがここに泊まるの!? ほ、本当に? 夢?)

 自分で承諾したのに、千恵の内心は穏やかではなかった。けれどそれを悟られないように管理人としての笑顔を浮かべた。

「湊斗、紬、おやつがテーブルにあるから食べてて。私はお客様にお部屋を案内しているからね」
「はーい!」
「あとであそぼうねー」

 子供達を残して篤史を一番広い客間へと連れていく。黙ってついてくる篤史との沈黙が重たかった。

「えっと、ここを使ってください。いつもなら食事は各自取っていただくことになっていますが、買い物も難しいでしょうから夕飯は私達と同じもので良ければご用意します。よろしければ後で軽食もお持ちします。……ではお時間までゆっくりお過ごしください」

 管理人として挨拶をして立ち去ろうとする。けれどそれは篤史の手によって阻まれた。
 掴まれた腕が熱い。

「待ってくれ。少し話がしたい」

 彼の言葉に千恵は息が詰まりそうだった。
 こちらは何も話すことはない。そう思うのに、腕を振りほどけなかった。

「結婚、したのか?」

 篤史の低い声が部屋に響いて消えていく。

(なぜ篤史さんがそんなことを気にするの? 私は貴方を……)

 どうしようもない悲しみが腹の底からわき上がってくる。思い出したくないのに。
 千恵は思わず口を開いてしまった。

「どうしてそんなことを聞くのですか? ご自身は結婚なさったのに!」

 こんな言葉をぶつけたい訳ではない。けれど、震えた唇から出た言葉を引っ込めることは出来なかった。
 溢れだした惨めな気持ちを振り払うようにぎゅっと目を閉じると、篤史は千恵の腕を掴む力を弱めた。

「していない」
「え?」

 思いがけない言葉に篤史を見つめると、彼はもう一度「していないよ」と答えた。
 そのまま彼は千恵に名刺を差し出した。
 そこには以前とは違う『代表取締役』という役職がついていた。

< 25 / 54 >

この作品をシェア

pagetop