一夜のあと、君に溺れる
酔った勢いというものがあるのなら、今がその時なんだと思う。

「酔った勢いでっていうシチュエーションに、憧れていたの」

「そう思えるくらいなら理性は保ってますよね。残念ながらそれは酔った勢いとは言わないですよ」

目の前の彼は可笑しそうにクスクス笑った。私の感覚は人と少しずれているらしい。そう言われるのは嬉しいような、そうでもないような……。

ソファの背に沈むように体を預けたのか、彼にそうやって誘導されたのか。心臓が、かつてないほどドキドキと音を立てている。望んだシチュエーションなのに、緊張の方が勝っているなんて、どうかしている。

「大丈夫ですか? 後悔しない?」

「大丈夫。だって、私が望んだことだもの」

酔った勢いで抱かれたいなんて、そんな不埒で大胆な希望を叶えてくれようとしている彼は、とんでもなく優しいんだと思う。

「桜子さんって、騙されやすそうですよね」

「そうかな?」

「そうでしょ。もし俺が悪い男だったらどうするの?」

「だって、大ちゃんは悪い人じゃないもの」

「そういうところが、騙されやすいところですよ」

「じゃあ、騙してる?」

「……騙してないけど」

「じゃあ、いいよね?」

「後悔しても知りませんからね」

そんなことを言いつつ、唇を優しくぱくっと食べられる。ん……と自然と甘い吐息が漏れた。

「ほんと、可愛いですね」

「そんなこと言ってくれるの、大ちゃんだけだと思うの」

「嘘ばっかり」

「ほんとだってば」

抗議の声は、すぐにキスで塞がれる。
甘くて優しい、蕩けるような口づけ。

大ちゃんとのキス、これで三回目?
キスだけで気持ちが良くて、どうにかなってしまいそう。こんな感覚、初めて。酔った勢いってすごい――。

「ベッドで?」

「うん」

手を引かれてベッドへ。またそこで、優しく押し倒されて……。きっと私がそう望んだから、してくれているのね。なんていろいろ考えていられたのはそれまでで、そこからはもう何も考える余裕がなくどっぷり大ちゃんに溺れた。

憧れのシチュエーションなんて吹き飛ぶくらいに、大ちゃんは私をめいいっぱい甘やかしてくれた。
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