一夜のあと、君に溺れる
大ちゃんがシャワーを浴びている間に、ミニバーからワインを取り出した。もう少しだけ、飲ませてほしい。いい感じに酔っぱらいたい。

だってほら、ドラマや小説のヒロインは、みんな可愛く酔っぱらっているじゃない。ピンク色の頬に、トロンとした猫目。私もそうなりたいのに、どうしたらそうなれるんだろう。

「桜子さん、まだ飲むの?」

いつの間にかシャワーを浴び終わった大ちゃんが、背後に立っている。

「だって可愛くなりたいもの」

「うん? 今のままでも十分可愛いけど、何を目指してる?」

聞かれたから正直に思っていることを話しただけなのに、大ちゃんはお腹を抱えて笑い出した。

「可愛く酔っぱらいたいとか、可愛いが過ぎるんですけど」

「だって憧れるでしょ、ドラマのヒロインに」

「桜子さんって見た目とのギャップがすごいですよね」

「そんなにギャップあるかな?」

「あります。綺麗と見せかけて可愛いタイプですね。あはは!」

「いろんなパターンに憧れてるわ」

「例えば?」

「壁ドンとか」

「王道か」

「顎クイとか」

「なるほどね」

「押し倒されるとか――きゃあっ」

突然視界がぐるんと回る。ぽすんと柔らかく押し倒されたのはベッドの上。

「ひとつ、叶っちゃった?」

「叶ったけど、何が起きたのかわからなかったわ」

今のシチュエーションを頭の中で思い出していると、顎をクイッと上げられて柔らかな口づけが落とされる。

「んうっ」

「ふたつめ」

ニコリといたずらっぽく笑う大ちゃんに、胸がキュンとなって苦しくなる。心臓が激しくドッドッドッと音を立てているのが分かる。

「待って、大ちゃん! やっぱり酔いたい!」

起き上がって、テーブルの上に出しておいたワインをグラスに注いだ。ゴクゴクと一気飲みすると体がほんのり熱くなる。ふわりとした感覚は、自分が酔っていることを教えてくれているみたい。

「ちょ、桜子さん。危ないなぁ」

大ちゃんが私の手からグラスをもぎ取り、ソファに座らせてくれた。
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