一夜のあと、君に溺れる
「いいんですか? いいんですか?」

心和ちゃんが興奮しながら喜んでいるので、何だか微笑ましい。心和ちゃんの恋人である佐々木先生は、清島先生のお友達でもあるから、この結婚式に新郎側で参列している。

「よかったね」

「はい! 嬉しいですぅ!」

と、なぜだか他人事みたいに笑う佐々木先生と心和ちゃん。いやいや、次はあなたたちが結婚するのよね? と生温かい目で見る千里ちゃんと私。

「あーあ、ブーケほしかったなぁ」

「ちょっと憧れますよねぇ」

「千里ちゃん、結婚の予定は?」

「お一人様継続中でーす。桜子さんは?」

「同じくでーす」

二人、顔を見合わせて、ふふっと笑った。
絶対に今すぐに彼氏がほしいだとか、結婚したいだとか、そういうのではない。でもやっぱり、私ももうアラサーだし、浮いた話のひとつやふたつ、ほしいものだ。

「テーブルの装花、持って帰っていいらしいですよ。よかったら」

「あっ、大ちゃん」

杏子さんの弟さんである宮越大福(だいふく)くん。通称、(だい)ちゃんが、手際よく花を抜いて小さなブーケを作ってくれる。大ちゃんは私より1歳年下の27歳。しっかり者で面倒見が良くて、真面目なタイプ。

「はい、桜子さん。千里さん」

「うわあ、ありがとう」

「この薔薇、髪に挿したら似合いそうですよね。ドレスに映えそう」

大ちゃんは、薄ピンク色の可愛らしい薔薇の花をちょうどいい長さに切って、アップにしている私の髪に挿してくれた。

「うん、可愛い」

「ちょっと大ちゃん、めっちゃできる男じゃん。桜子さん、すごく似合ってますよ」

鏡がなくて自分の姿は見えないから、そうっと手を伸ばして薔薇の花を触る。ネイビー色のパーティードレスに、彩りが添えられた気がする。それに、男性にそんなことされるのも初めてだ。
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