フラワーリング
作業台にスケッチブックを広げる。

窓から差し込む午後の光が、白い紙の上を優しく照らしていた。

私は一本の白いバラを見つめながら、ゆっくりと鉛筆を走らせる。

橘さんは少し離れた場所で花の手入れをしていたが、ふとこちらを見て小さく笑った。

「意外でした。」

「え?」

「今はタブレットで描く方が多いのかと思っていました。」

思わず手元の鉛筆を見る。

「ああ……。」

少し笑ってしまう。

「もちろんデジタルでも描きます。」

「でも、最初の一枚だけは紙なんです。」

「最初に紙へ描くと、その日の空気まで一緒に残せる気がして。」

そう言って、もう一本線を重ねる。

橘さんは静かに頷いた。

「なんとなく分かります。」

その一言に顔を上げる。

「花も写真には残りますけど。」

一本のバラをそっと手に取る。

「香りとか、重さとか。」

「その場じゃないと分からないものがありますから。」

思わず笑ってしまった。

「似てますね。」

「仕事の仕方。」

橘さんは少し驚いたように目を瞬かせ、それから穏やかに笑った。

「そうかもしれません。」

その笑顔を見て、私もつられて笑う。
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