フラワーリング
***

窓の外では午後の光が少しずつ色を変え始めていた。

気付けば夢中になってスケッチを描き続けていたらしい。

最後の一本線を描き終え、私は大きく息をつく。

「できました。」

橘さんがスケッチブックを覗き込む。

「すごい……。」

その一言に、少しだけ照れくさくなる。

「……あ。」

白いバラの横に、長い指先が描かれていた。

自分でも気付いていなかった。

思わず頬が熱くなる。

「まだラフです。」

「ここから何度も描き直します。」

「でも、今日見た花じゃなかったら、この形にはならなかったと思います。」

そう言ってスケッチブックを閉じる。

「今日は本当にありがとうございました。」

バッグへしまいながら頭を下げる。

「何かお礼をさせてください。」

橘さんは少しだけ考えるように視線を落とした。

その間、私は鉛筆を筆箱へ戻し、消しゴムをしまおうとして――

ころん。

手元から小さな消しゴムが転がり落ちた。
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