煉瓦坂の少し奇妙なX'mas
「公理さん、俺じゃないっすよ」
 店に入って一番、吾郷君がそう呟いた。
「……そうなんだよね。俺でもないよ」
 本当にわけがわからない。朝、というか昼近くに店に向かったら、雪だるまがいくつか並んでいた。予約にはまだ時間があったから調べてみたら、うちの店の前くらいからソリみたいな跡が坂を下って駅前まで続いているのに気づく。俺の店は煉瓦坂って呼ばれる坂道に面していて、見下ろすと駅前のロータリーが遠くに見える。ここから滑って下りれば気分はよさそうだ。ただし今は人が多くて不可能。だから滑るとしたら真夜中の誰もいない時間帯だろう。
 雪は昨日の夜半には止んだそうだから、ソリ跡ができたのはそれ以降。誰かがここで雪だるまを作って、ソリで滑って帰った? 真夜中に? 振り返れば坂はもう少し上まで続いているけど、ソリ跡が残るのはうちの店の前からだ。
 やっぱりよくわからないな。
 改めて見れば、煉瓦坂の左右の店々の前には雪だるまが連なって、毎年そうな気もするけれど、うちの店の周りは特に多かった。本当になんなんだ?
 けどそれどころじゃない。
 そろそろ予約が入ってる時間だ。
 だから店に戻ってエプロンをして、それで思い出して、店に来る途中で買ってきたシュトーレンを投げ込んだ。賞味期限は年末だし、大丈夫だろう。そして袋をのぞき込む。どう考えても、昨日より増えている、気がする。わけがわからない。だからカラーリング中の吾郷君に耳打ちする。
「ね、今日もプレゼント増やした?」
「今日は入れてないっすよ。また増えてます?」
「うん……さすがにちょっと気になるレベル」
「……俺、もう少しで休憩なんで、防犯カメラみていいすか? 弁当ですし」
「えっと……もしよかったら、お願い」
 監視カメラは休憩室で見れる。だから毎日自動で変わるパスコードを渡す。
 リョーカイと腕を上げる吾郷君に後でお礼をしないとと思いつつ仕事に入る。忘年会シーズンまっさかりで、お姉さん方のセットの仕事が多い。バタバタしていたら吾郷君がワゴンにメモを置いていった。えっ?
「あの、お客様、ひょっとしてツリーのところの靴下にプレゼント入れられました?」
「え、うん。25日にプレゼント交換するんでしょ?」
 全く悪びれもしない、当然のような答え。
「えっと、そうですけど。どこでお知りに?」
「え、どこだったかなぁ。でもみんな知ってるよ。来てる人は1個ずつくらいいれてるんじゃない?」
 お姉さんは何でもないように、つまりみんな知ってるイベントみたいに言う。
 まじかよ。
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